復活の蔵
2011年3月は、日本人にとって忘れられない日となりました。
そろそろ卒業間近となり、慌ただしい時期だったことを覚えています。
あの日は確か、3月11日の金曜日。時刻は14:46。ちょうど研究室に行こうと思って、大学の校舎に入ろうとしたときでした。
いつもとちがう、建物がきしむような音。その音から数秒後に地響きとともに訪れる強い揺れ。直感的にこれはまずい揺れだと思いました。しばらく外で待機して、揺れが収まるのをまっていました。
周囲のコンビニを見ると、電気が落ちたせいか消灯しています。停電したと即座にわかりました。しばらくして、学生たちが避難を開始しました。
各自、解散し帰路につきます。
しかしながら、電気は復旧しません。情報を得る手段がなく夜が訪れようとしていました。
3月とはいえ、東北地方の夜はまだまだ寒いです。ストーブは必須なのですが、電気がないため暖を取ることもままなりません。
しかたなく、近所の避難場所に指定している高校の体育館へ毛布をもって移動しました。これが人生初の避難経験でした。
避難場所では携帯ラジオが流れており、現状のニュースが情報として入ってきました。
思わず耳を疑うほどの凄惨な状況。後に見ることになるあの沿岸部の被害。あの日、すべてが終わってしまった人たち。そんな光景をじかに目の当たりにしました。
あれから6年。
当時、岩手県大槌町にあった蔵元は震災で流されてしまいました。
それから数年の歳月を経て、盛岡で復活した蔵、赤武酒造。
杜氏はなんと20代。平均年齢も若い蔵元です。
最近この赤武を友人からいただきました。
前々から、いつか飲みたい、応援したいと思っていた銘柄です。
今夜は赤武酒造の純米吟醸、AKABU雄町をいただきました。
特徴的なロゴマークが印象的です。
お味は、フルーティで甘酸っぱい今っぽいお酒。ワイングラスで飲むと香りがいっそう感じられます。
岩手県の日本酒は、南部美人やあさ開、浜千鳥や七福神といった質実剛健なイメージがありましたが、これはそれとはちがった若い人にもうける味だと思います。
美味しかった。若き杜氏の将来に期待するとともに、自分も負けずにがんばっていこう、そんな気持ちにさせられるお酒でした。