shunbourianの日記

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『ストーナー』を読んだ感想

ストーナー』を読んだ。

せっかくなので、ちょっとした感想を。

 

 

あらすじとしては、ある男の幼少から死ぬまでを描いた小説。

 

農場で育ち、大学で英文学に傾倒し、大学教師となる。その過程で、結婚があったり、娘が生まれたり、などの物語はあるが、基本的に淡々と描写が続いていく。

 

ストーナー自身には、不幸な出来事が多く降りかかるように思える。結婚生活はうまく行かず、家庭内の関係、特に妻との関係は冷えている。妻はなかなか癖がある人物で、もともとうまくいくはずのない相手だったと思う。娘はできるが、家族間の関係性は良くはならなかった。

 

大学教師の仕事も順調ではあったが、ある時、学内政治絡みの闘争で破れる。

学問に対して不誠実な学生に対して、正当な評価(落第)を与えることができなかったことが、本作唯一の激昂場面だろう。彼はそれほど真剣に学問に向き合っていたのだ。

 

かくして、家庭もうまくいかず、仕事の政治的闘争にも破れたストーナーではあるが、それでも日々を淡々と生きていき、定年まで勤め上げる。そして、人生の最後を迎えることとなるのだった。

 

良いことは素直に受け入れられるが、悪いことを受け入れるのは難しい。ストーナーの人生を客観的に見ていると、不幸が積み重なるように思える。しかし、本人はその時その時を受け入れ、愛をもって事実と向き合える強さがあったのではないだろうか。

 

思えば、人の一生は、良いことよりも悪いことの方が多いのかもしれない。ストーナーの人生は淡々としているが、平凡ではないと私は思う。人にはそれぞれ何かしらのドラマがあり、必ず起伏があるからだ。問題は、その出来事をどう受け止めるか。悪い出来事に直面し、受け止めることができず停滞するか、受け入れてそれでも前進しようとするのか。

 

ストーナーの一生をトレースすることで、自分はどうやって生きるのかを考える。

そういう思いにさせてくれる小説だった。

 

とても明るい光が射す部屋で、人生最後を迎えられることは幸せかもしれない。

 

 

 

(補足)

ちなみに、ネットだとそこそこ知名度はあるみたいだが、リアル書店だとマイナーらしく、なかなか取り扱っていない。ネットで注文するのが良いかもしれない。